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編集便り

パン菓新聞社記者がちょっといい話をお届けします

スペイン石窯パンの家ボノス(鳥取県鳥取市)

注目の店舗


ボノス外観
▲シンボリックなスペイン石窯やテラス席を備えたロケーション


鳥取駅から車で5分、今年1月にオープンした大型ベーカリー。
“鳥取にスターバックス初上陸”で話題になった地域での
本格的手づくりのパン屋のオープンも大きな話題を呼んだ。
現在も週末は1日約700名が来店するという大盛況となっている。



パンを通じて
地域のお客様との絆を深める店に



異業種からの参入
同店を運営するのは㈱アマドの加藤志野オーナー
母体企業は加藤氏のご主人が経営するうどんのチェーン店。
ベーカリー経営は同店が初めてという異業種からの参入である。
開業のきっかけとなったのは、うどん店の開業展開が一段落し、
他業種で新たな道を開いていこうというものだという。
開店にあたり加藤さんのベーカリーへの熱い想いがあった。

「松江市に出かけたとき、“石窯パン工房 森のくまさん”という
ベーカリーに出会い、こんな素敵な雰囲気の店を
ぜひ自分でもやってみたいと思った」


この店は、ベーカリー開業をプロデュースする㈱ダイユーが携わった店。
加藤さんも早速開業に向かって動き始め、今年1月に完成した。


中身がしっとりとした
石窯ならではのパンを提供
 
ボノスの核となるシェフは、立ち上げのリーダーとして店づくりを行ってきた
ダイユーの製造指導員である濱口知之氏。
目玉は何と言ってもスペイン石窯で焼き上げたアイテム類。
この石窯は、煙道を利用してパンを焼成する仕組み。
煙道とは、燃焼室と呼ばれる場所で温度を上げ、その熱を逃がす道のことで、
庫内を均一な温度に保ちやすく、比較的短時間で焼成できるため
パン表面のカラメル化が早く進み、中に水分が残った状態で仕上がるため、
時間が経っても中はしっとりした食感を保つことができるのが特徴。

同店の一番人気は『塩パン』
オープンから数ヶ月間の土・日には、1日1,300個以上を販売した。
できるだけ焼きたてを提供しようという考えから、
焼成回数や焼き上がり時間は日々データを取りながら
細かく調整してゆき、
現在は1日に13回ほど焼成している。


塩パン
▲店舗売上の1割を占めるという人気の『塩パン』(100円)


その他の人気商品は『プレミアムクリームパン』(210円)。
仕込み段階で自家製のカスターを少なめに注入しておくと、
焼成後にカスターの重みでパンの内部に空洞ができる。
その空洞部分に、自家製カスターとホイップした生クリームをあわせた
ディプロマットと呼ばれるクリームをさらに注入して仕上げる。
揚げたてにこだわる『国産牛肉しあわせのカレーパン』(170円)
濱口リーダーオリジナル商品『チーズの羽』(140円)も人気。

クリームパン
▲2種のクリームがおいしい『プレミアムクリームパン』(210円)


自社スタッフの育成に注力
オープンから半年、来店客数や売上は順調にクリアしている。
濱口リーダーの現在の課題は、リーダーの育成。そのために

「技術はもとより、パン職人にとって基本的な体力となる
“考える力”を伸ばすような指導が大事」


と話す。店名の「ボノス」は、スペイン語で「絆」という意味。

「パンを通じて地域の住民やお客様、
また同店で働く スタッフとの絆を深めていきたい。
スタッフはできる限り正社員として採用し、
できる力を発揮してもらいたい」


と語る加藤オーナー。
将来は、この地に支店を展開する目標も視野に入れている。

加藤さんと濱口さん
▲オーナーの加糖さん(左)と濱口リーダー(右)

(平成28年8月15日号掲載)


【SHOP DATA】
住所:鳥取県鳥取市立川町5-233-1
最寄駅:鳥取駅から車で5分
TEL:0857-30-5410
営業時間: 7:30~19:00 定休日なし
アイテム数:約100種
(食事パン・ハード系20、サンド20、菓子40、調理20)

ブーランジェリー ヤマネコ(金沢市・西念)

注目の店舗

店主の岡﨑シェフの前職は…なんと小学校の先生でした。
“もっと自分を表現したい”とパン職人を志したのが30歳の頃。
市内のホテルや都内有名店でひたすら修業に励み、
今ではグルメサイトにて“金沢の人気No.1ベーカリー”という
評判のパン屋さんになりました。



店内


変わらないために、変わる。

店名のヤマネコとは、ルキノ・ヴィスコンティの映画“山猫”から。
主人公のセリフ

「変わらずに生き残るためには、変わらなければならない」

に感銘を受けたことによるもの。
その言葉を実証するように、
日替わりで作っている食パンのうち、
『国産小麦の食パン』に使用する小麦を
ほぼひと月ごとに変更しているそう。
現在は“春よ恋”を、
先月は“キタノカオリ”を使い
それぞれ単一品種のみで製造しています。
その理由について

「まずは小麦そのものの味を確かめたいから。
 そして小麦の品種を変えるごとに
 レシピを調整しなければならないので
 職人の力が試されるため、モチベーションが高く保たれる」


とこだわりを説明。

お客様にも、“小麦により味が違っておもしろい”
好評だそうです。最初は不安でしたが、
現在は小麦の違いによる変化を楽しんでいるそうです。

食事パンでは、『カンパーニュ』も名物のひとつ。
4種の粉をブレンドして、
小麦から起こしたルヴァン・シェフを使い
オーバーナイトでうま味を引き出しています。
分割重量1,800gという大きな焼き上がりを
店頭で量り売りしているこだわりのパンです。

カンパーニュ
▲『カンパーニュ』
プレーン(1.15円/g)、セレアル(1.26円/g)、
レザン(1.46円/g)を揃え、量り売り



夢広がるお菓子の数々

菓子文化が根付く金沢ならではの
色とりどりのヴィエノワズリーや、
タルトなどが店頭を飾ります。

「パンは日常の食べ物ですが
 日常に少しだけ上質さを加えたい」


と考え、工夫を凝らしています。
例えば、ブリオッシュ生地を型に入れて焼成し、
クリームをのせ粉糖を振ったり、
アクセントとしてハーブを添えるなど
見た目にもこだわりがうかがえます。

5.jpg
▲ブリオッシュ生地にカスタードと
クリームチーズを合わせ、
ミックスベリーをのせた
『ベリーベリーのブリオッシュ』(260円)



お客の立場に立った接客

販売を担当するのは貴子夫人。
心掛けていることは

「“感謝の気持ち”をきちんと伝えること」

レジ前に留まらず、お客様が安心して購入できるよう
に使用食材などを伝えたり、
パンの並べ方は
ハード系、フォカッチャ、ブリオッシュ、折込生地など
アイテムを生地別に配置するなど一工夫。
お客様にわかりやすくし、
同じ生地のパンを買ってしまわないための配慮だそうです。

1.jpg
『ハーブソーセージフォカッチャ』(300円)は、
フォカッチャ生地でソーセージを巻き、
セレアル(オーツ麦、ひまわりの種、
白ゴマ、アマニ)を付けて焼成


「パンについては素人なので、
 お客様の立場で考えて工夫しています」


と話します。
保存方法、食べ方、焼き上がりのスケジュールなどを
プリントしてお客に手渡しているのも

「自分でもわからなかったことを
 お客様に伝えたい」


という貴子夫人の心配りです。

一日約140~160人という来客数で、
人気のパンは午前中に売れてしまうことが多いため、
午後にも焼成回数を増やすことが
今後の課題とのこと。

岡﨑夫妻
▲岡崎シェフと奥様の貴子さん

岡﨑シェフは

「将来は、もっとじっくり作れるよう
 郊外に移転するか、店を任せられるような
 スタッフを育てるか決めかねている」


と話します。じっくり、ていねいな仕事への
決意が伝わってきます。
(平成28年8月1日号掲載)



外観

【ショップ情報】
住所:石川県金沢市西念4丁目19−26
    プレイヤード 1F
TEL:076-232-7785

ドンク創業111周年記念フェア開催 クープ・デュ・モンド出場選手が開発したパンを発売

注目の記事

ドンク(中土忠社長)は、本年8月8日に創業111周年を迎えることを記念し、“111th Anniversary ~ドンク創業111周年記念フェア~”を、8月1~14日まで全国のドンク、同エディテにて開催する。同期間に記念商品が登場することに合わせ記者発表会を行った。

ドンク
▲開発を担当した茶山寿人さん(写真左)と瀬川洋司さん(写真右)

今回、同フェアのコンセプトは、“トップクラスの技術力を結集し、特別なテクニック、手間を要するこだわりのある商品、また目新しい素材を使用した商品”。会場では創業111周年を記念するパン8種が紹介された。

この期間限定商品を開発したのは、本年2月にフランスにて行われた“クープ・デュ・モンド・ド・ラ・ブーランジュリー”に日本代表・パン部門選手として出場した瀬川洋司さんと同ヴィエノワズリー部門選手並びに日本チームリーダーであった茶山寿人さん。両氏は同社にて商品開発や技術指導に従事しており、フェアの商品のうち4点ずつを担当、商品の魅力をそれぞれアピールした。


瀬川さん開発『パンペイザン』

クープ・デュ・モンド本選で製作したアイテム。本選では自家製ルヴァンを使用したが、ドンク全店で安定して作れるように種をパン・ド・カンパーニュとフランスパンのパート・フェルメンテを合わせて使用し、成形を伝統的なファンデュ形に仕上げている。
パン
▲写真右から『パンペイザン』(648円)、『ポークイベリコ グルマン』(368円)、『パン・ミ<エル シトロン』(432円)、『抹茶ショコラブラン』(216円)


茶山さん開発『ブリオッシュカシス・オ・テ』

皮生地は油脂を折り込んだブリオッシュで、そこに紅茶の茶葉を練り込んだブリオッシュをのせ、中心にはオレンジカット入りのクリームを包んだ凝ったもの。トッピングにはカシスとダッコワーズで4重奏のおいしさを表現している。

ヴィエノワズリ1
▲写真右より『ブリオッシュカシス・オ・テ』(303円)。左は『南イタリア産トマトのポンプ・ア・ルイユ』(260円)は南欧風のブリオッシュにオリーブオイルを練りこんだもっちりした生地。南伊産トマト、クリームチーズを乗せ、トマト風味のジュレをかけている



(詳細は本紙8月1日臨時増刊号に掲載)

喜福堂(東京都・豊島区)

街のパン屋さん

あんぱんを看板に創業100年
新社長で一族経営を越える

1外観2 

巣鴨のとげぬき地蔵尊・高岩寺の
向かいにある老舗のパン屋さん。
創業100周年を迎えて息子の金子幾雄さんが
4代目社長に就任、新体制で
心機一転の101年目のスタートです。 

あんぱんの誕生は
二代目のあんこ×三代目のパン
高齢者や観光客に人気の地蔵通りですが、
平成生まれの地元小学生ファンもいる人気店。
創業は大正5年、初代の喜三郎さんが
深川で開業し巣鴨へ移転、
昭和36年に屋号を「喜福堂」と改めました。

3店内 

和菓子職人だった二代目八三郎さんの代になり、
製餡所を訪ね選んだこだわりの小豆を自ら炊き、
毎日手で練り上げていた餡が
現在の看板商品へとつながります。

パンを本格的に製品化したのは、
洋菓子を学びパンの道を選んだ三代目房義さんで、
「二代目の餡」×「三代目のパン」が合体して
ついに『喜福堂のあんぱん』が誕生しました。

4つぶあんぱん1 
5あんパン断面
『つぶあんパン』(200円)は現在まで
レシピを継承。美しい紫色の餡はコクが
ありながらすっきりした味わい
『こしあんパン』とは人気を二分しており、
各ミニサイズ(160円)もあります


忠実な継承を軸に、次の時代へ
『喜福堂のあんぱん』が
長年愛される秘密とは? 

「純度の高い氷砂糖を使うことで
 コクと艶のある上品な餡に仕上がり、
 焼き立てでは液体のようにトロッとした質感に、
 冷めるとパン生地とバランスが
 ちょうどよい硬さに落ち着く」

とのこと。
餡は“練り”が品質を決めるため、
これまで代々店主が練ってきましたが、
新体制では製造スタッフが担当します。

あんぱんと並び長年の売れ筋に『クリームパン』もあり、
こちらもクリームの硬さがこだわり。
パン生地は、あん・クリームパン用、食パン、フランスパンも
全て当日仕込みで、菓子パンは少量ずつ焼成するため
常に湯気の上がる焼き立てを購入できます。

7クリームパン 
人気商品『クリームパン』(160円)の
カスタードはしっかり目ながら軽い食感で、
毎日7回以上炊き上げるとのこと

8食パン 
『喜福堂食パン』(一斤330円)はきめの細かい
しっとり感が特長。常連客の一番人気なので、
食パン生地を使った新商品開発も進める予定です


幾雄社長は、

「今があるのは先代たちのレシピのおかげ。
 これが無ければ先の100年は迎えることが
 出来ないので、まずは忠実な継承を大事にして、
 さらにこのおいしさをどう届けるか、
 お客様の笑顔を増やし楽しませる、
 時代に対応したマーケティングが勝負どころ」

と話します。(※価格は税別)
(2016年4月15日号掲載)


【ショップ情報】
住所:東京都豊島区巣鴨3-17-16
(JR山手線・都営三田線巣鴨駅徒歩4分)
営業時間:10時~19時
(休み:月・火)
.

ホーフベッカライ エーデッガー・タックス(東京都・千代田区)

注目の店舗

ハプスブルク家御用達の
名門ベーカリーが世界初上陸


【外観】ホーフベッカライ エーデッガー・タックス

1569年創業のオーストリアの名門ベーカリーが
2015年9月5日、東京・神田の商業施設
「マーチエキュート神田万世橋」にオープン、
本格営業を開始した。



※現店舗での営業は7月15日(水)で終了
 今後、ノイエスと統合して新規開業の予定



ウィーンのパン・菓子の文化を発信

明治45年完成の赤レンガ造りの万世橋高架橋を再現した
商業施設にふさわしい、伝統あるベーカリーのオープンである。
古くから文化が根付いている神田という、
文化発信の拠点として最適なロケーションでもある。


オープンに際して、同店の9代目となる
オーナーシェフロベルト・エーデッガー氏は
10代目となる子息のマチアスさんと共に来日。
古都グラーツに位置し、ハプスブルク家にも愛された老舗が
世界初上陸となった理由について
「欧州以外の文化圏にウィーンのパン・菓子、
また文化そのものを広めたいと考え、
欧州文化に親しみが強い日本を選んだ。
良いパートナーに出会い、感謝している」
と語った。

また、同店に伝わる120年前のクグロフ型を
オーナーシェフである野澤氏に贈呈している。


1エーデッガー氏
▲ロベルト・エーデッガー氏(写真左)は21歳で
マイスターを取得。右は息子のマチアスさん



ノイエスにてオーストリア食文化の普及に努めてきた野澤氏は
出店の経緯について
「エーデッガー氏と欧州で知り合い、
3年前に百貨店の展示会で同店のパンを出品したことが
きっかけで、職人としての感性が近いことから意気投合し、
いずれ日本に出店させたいと考えていた。
赤レンガの重厚感あふれるマーチエキュートの
佇まいが気に入り、今回の出店となった」

と話す。

今後は2号店なども展開も視野に入れていくとのこと。


2野澤氏
▲エーデッガー・タックス本店に伝わる120年前の
クグロフ型を贈呈されたノイエスの野澤孝彦氏




作れる職人も少ない『ハンドカイザー』

約7坪の店で扱うパンや菓子は合計約30種。
ノイエスの厨房で、門外不出のレシピを伝授された
野澤氏が製造している。
スペシャリティは手成形の『ハンドカイザー』で、
機械化が進んでいるオーストリアでは
作れる職人の数は少ないという。

「手成形すると生地の目が緻密になるため食感がもっちりし、
また水分が抜けにくいためおいしさが長持ちし、旨味も強くなる」

と野澤氏は語る。



5ハンドカイザー
▲本国では丸めてスタンプを押すだけの成形も多い
カイザーだが、同店は手成形の『ハンドカイザー』(200円)


3キプフェル
▲クロワッサンの原形となった『キプフェル』(250円)


6オープンサンド①※イメージ
▲朝食やランチにも最適なオープンサンド
日本限定メニュー




昔ながらのベーカリーは希少


オーストリアのベーカリーでも、現状は大半が機械化されており、
規模も大きくチェーン展開している店が多い。
そのような中でエーデッガー・タックスは完全にスクラッチ製造。
グラーツでは最古のベーカリーで、
1888年にはオーストリア-ハンガリー帝国王家御用達を授与しており、
レシピの大半は当時のままだという。


本店のパンについて
「約450年間の歴史で培ってきたレシピの数は約1,000種あり、
その中から20種程度を選んで製造している」
とエーデッガー氏。

すべてが伝統製法に則って作業する職人は8名。
ハンドカイザーは4人の職人で一日400~500個製造、販売する。
(2015年10月15日号掲載)



【ショップ情報】

※同住所での営業は7月15日(水)で終了
 今後、ノイエスと統合して新規開業の予定


住所:東京都千代田区
神田須田町1-25-4
マーチエキュート神田万世橋S3区画
TEL:03-5296-5777
営業時間:8時半~21時(月~金)
11時~21時(土)
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