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編集便り

パン菓新聞社記者がちょっといい話をお届けします

nichinichi(川崎市麻生区)

街のパン屋さん

生活者に寄り添い
生産者との
架け橋を目指す


川崎のオシャレ度UPに貢献する新百合ヶ丘のパン屋さん、nichinichi。元お笑い芸人という異色の経歴を持つ川島善行シェフがパンの道に入ったのは、芸人を辞めて落ち込んで20キロも痩せてしまったとき、友人が差し入れてくれたパンのやさしい味わいに感動したことがきっかけだったとか。

外観

出店地選びで川島シェフは何回も同地に通う中、通りかかった女性から「この辺りは道が暗くて、子どもの塾やお稽古帰りの際が心配。ぜひ出店して明るい道のりに」と激励され、地域貢献にもなると出店を決めたそうです。リテイルパン購買の中核となる子育て世代、中流上位以上の世帯層が多いこともプラス材料。商品構成については、“親が我が子に食べさせたい、安全安心な材料を使用したパン”、“地域の食材を使用したパン”という品揃え。



「お客様を喜ばせたい」
という発想の店づくり


川島シェフは東京・荻窪のパン屋さんで5年間の修業を経て、代々木の“365日”のシェフを3年間務めた後、理想とする店をつくりあげました。「良質な材料を使用し、ていねいに焼くことで、生活者に寄り添い、生産者との架け橋になることを目標にしている」と話します。

川島シェフ
芸人さんの経験がサービス精神の高さに生かされています



朝9時の開店から大人気なのが限定40本の『nichinichi食パン』(420円)。

nichinichi食パン
“親子4人で食べ切るサイズ”。北海道産“春よ恋”を100%使用。
子どもが食べやすいようにクラストまでふわふわ、しっとり。


素材へのこだわりは「卵」にも。店のある麻生区内の養鶏場と直接取引をし、生みたての卵を譲り受けている。「弾力ある卵の食感を生かすために型に入れて蒸し焼きにし、サンドイッチの具材にしています」とのこと。

玉子サンド右のみ
『黒川卵のだし巻きサンド』(190円・ハーフ)




ハード系で人気の高い『nバゲット』は、きたほなみ、春よ恋など全5種の小麦をブレンドし、雑味と香りのバランスを設計。
外国人のお客様の要望に応えて味の濃いバゲットを実現したそうです。

nバゲット
『nバゲット』(260円)


しんゆりフォカッチャ
地場産の野菜を取り寄せて仕上げた『しんゆりフォカッチャ』(260円)も好評



「とにかくお客様ありき。喜んでもらえるパンがつくりたい」と、力強く語る川島シェフには、かつて目指した芸人ならではのサービス精神が息づいています。「今後は野菜の生産者、ヘアデザイナーなどの異業種の友人とともに小さな町のような複合施設をつくって地域活性化に役立ちたいと」という夢を語ってくれました。


店内


【ショップ情報】
神奈川県川崎市麻生区万福寺4-8-4 ペルナ1F
営業時間:9:00~19:00/不定休
(※価格は全て税抜き)

https://nichinichi.shop/

ニコラス精養堂(東京都・世田谷区)

街のパン屋さん

大正時代に世田谷に開業
95歳の2代目現役社長

パンから和洋菓子まで常時100種類以上を販売する
世田谷の老舗パン屋さん「ニコラス精養堂」
1店内2 

松陰神社参道の土産物店として
銘菓『松陰饅頭』で親しまれたことは有名ですが、
その始まりはミルクホールと牛乳屋を営んでいた創業家が
関東大震災で焼け野原となった青山から移り住んできた
大正時代に遡るといいます。

その後は、軍御用達のパン製造に始まり、
戦中戦後の配給パン、学校給食パンと、
日本の歴史とともにパン屋を歩んできたそうです。

2人気6品 
中央が『松陰あんぱん』
創業100年記念に開発。
『松蔭饅頭』の黄身あんをベースにより瑞々しい味わいです。

自家製カスタード入りの
『甘夏ミカンミルクデニッシュ』
デニッシュ風ながら翌日もソフト感が続きます。(写真上)

3食パン 
『ニコラス食パン』
具材を塗ることを考えたシンプルな生地。
パッケージロゴもどこか懐かしい


4サンドイッチ類 
安くて驚くボリュームのサンド類は
飛ぶように売れていました。
くきわかめを野菜と挟んだ『スペシャルサンド』
ほうれん草入り食パンをつかった『グリーンサンド』など
種類も豊富です。

今後のテーマは町おこし。
現在、商店街仲間である
有名フランス料理店の店主らと
街を盛り上げようとコラボ企画を
進めているそうです。

SHOP DATA
【ショップ情報】
住所:東京都世田谷区若林3-19-14
最寄り駅:東急世田谷線松陰神社前駅目前
営業時間:8:00~20:00 日祝休

畑のコウボパン タロー屋(さいたま市・浦和区)

街のパン屋さん

季節の酵母が
オリジナルパンを生む

1.jpg 

小さな畑がぽつぽつと残る住宅街に
「畑のコウボパン タロー屋」はあります。
全てのパンは自家製パン用酵母種から作られ、
畑に植わったベリー類、柑橘類、野菜、ハーブ、
そして親戚や知人から届く季節の素材から
日々パンの種が生まれています。
2畑 



3キンモクセイ 
本格的な秋を迎える頃、
可憐な花を散らすキンモクセイ。
オーナーシェフの星野太郎さんは
満開時に花を摘みとり種を起こし
『キンモクセイ酵母のリュスティック』を作ります。
パンを噛むうちに、
可憐な花の香りがふわっと広がります。
“パンから季節を感じる”瞬間です。

4巨峰パン 
『巨峰酵母のデザートフォカッチャ』は、
巨峰の上品な甘味が濃縮された贅沢なパン

5洋ナシ 
使用する直前に酵母種をすりつぶした
『すりつぶし洋梨酵母の白パン』


6.jpg 
酵母の香りや味から、どんなパンを作るか
アイデアを練るそうです。
手前が『キンモクセイ酵母のリュスティック』
「プルーン酵母」や「りんご酵母」などなど
さまざま揃います。

県外からもお客が訪れるほか、
通販“通パン”も人気だそうです。
 (H27年11月15日号掲載)


【ショップ情報】
住所:埼玉県さいたま市浦和区大東2-15-1
毎木曜日と土曜日 10:00~売り切れ次第終了

喜福堂(東京都・豊島区)

街のパン屋さん

あんぱんを看板に創業100年
新社長で一族経営を越える

1外観2 

巣鴨のとげぬき地蔵尊・高岩寺の
向かいにある老舗のパン屋さん。
創業100周年を迎えて息子の金子幾雄さんが
4代目社長に就任、新体制で
心機一転の101年目のスタートです。 

あんぱんの誕生は
二代目のあんこ×三代目のパン
高齢者や観光客に人気の地蔵通りですが、
平成生まれの地元小学生ファンもいる人気店。
創業は大正5年、初代の喜三郎さんが
深川で開業し巣鴨へ移転、
昭和36年に屋号を「喜福堂」と改めました。

3店内 

和菓子職人だった二代目八三郎さんの代になり、
製餡所を訪ね選んだこだわりの小豆を自ら炊き、
毎日手で練り上げていた餡が
現在の看板商品へとつながります。

パンを本格的に製品化したのは、
洋菓子を学びパンの道を選んだ三代目房義さんで、
「二代目の餡」×「三代目のパン」が合体して
ついに『喜福堂のあんぱん』が誕生しました。

4つぶあんぱん1 
5あんパン断面
『つぶあんパン』(200円)は現在まで
レシピを継承。美しい紫色の餡はコクが
ありながらすっきりした味わい
『こしあんパン』とは人気を二分しており、
各ミニサイズ(160円)もあります


忠実な継承を軸に、次の時代へ
『喜福堂のあんぱん』が
長年愛される秘密とは? 

「純度の高い氷砂糖を使うことで
 コクと艶のある上品な餡に仕上がり、
 焼き立てでは液体のようにトロッとした質感に、
 冷めるとパン生地とバランスが
 ちょうどよい硬さに落ち着く」

とのこと。
餡は“練り”が品質を決めるため、
これまで代々店主が練ってきましたが、
新体制では製造スタッフが担当します。

あんぱんと並び長年の売れ筋に『クリームパン』もあり、
こちらもクリームの硬さがこだわり。
パン生地は、あん・クリームパン用、食パン、フランスパンも
全て当日仕込みで、菓子パンは少量ずつ焼成するため
常に湯気の上がる焼き立てを購入できます。

7クリームパン 
人気商品『クリームパン』(160円)の
カスタードはしっかり目ながら軽い食感で、
毎日7回以上炊き上げるとのこと

8食パン 
『喜福堂食パン』(一斤330円)はきめの細かい
しっとり感が特長。常連客の一番人気なので、
食パン生地を使った新商品開発も進める予定です


幾雄社長は、

「今があるのは先代たちのレシピのおかげ。
 これが無ければ先の100年は迎えることが
 出来ないので、まずは忠実な継承を大事にして、
 さらにこのおいしさをどう届けるか、
 お客様の笑顔を増やし楽しませる、
 時代に対応したマーケティングが勝負どころ」

と話します。(※価格は税別)
(2016年4月15日号掲載)


【ショップ情報】
住所:東京都豊島区巣鴨3-17-16
(JR山手線・都営三田線巣鴨駅徒歩4分)
営業時間:10時~19時
(休み:月・火)
.

しげぱんはうす(東京都・足立区)

街のパン屋さん

しげぱん外観

父譲りの情熱で独立・開店へ


北千住駅の東口に伸びる商店街から
一本入った路地に佇む一軒家の店構え。
面積約9坪で売り場は約3坪、
決して広いとは言えない店舗ですが、
ひっきりなしにお客が訪れる人気店です。




高齢者向けに歯切れのよいパンを

オーナーシェフの三﨑成之さんは、父の店である
ミサキベーカリーから独立、2013年7月に開業
。貯金と区の補助金、そして父からの援助を得て
出店を果たしました。
扱うパンの構成は
調理パン3、菓子パン3、ハード系3、食パン1という比率。


パンの棚
▲明るい厨房の中、夫婦2人で製造と販売をこなす。
ラインアップは約65種



三﨑さんがこだわるのは“食感”。
9種類作っている生地には
中種、加糖中種、老麺、サワー種などを
配合して工夫を施し、
目指す食感と深い味わいを作りだしています。


「顧客の7割以上が高齢者ですから、
 噛みやすく柔らかな生地、口溶けのよい
 食感を作りたいです」


と、地域に根差したパン作りを心掛けています。
中種使用、オーバーナイト法の
フランスパンの食感も、
クラストを焼き込まずにカリカリと、
クラムはもちっと歯切れよい食感です。

バゲット
▲クラストが軽い『バゲット』220円。
 チーズ入りのバリエーション
 『チーズフォンデュ』も人気



評判が良いのが香子夫人の作る
調理パン。
パニーニのサンドイッチは直径12~13センチと
大型で具材のボリュームもたっぷり。
価格は240円とお手頃で
注文があれば温めて提供するそう。

パニーニ
▲左上から時計回りに『ベーコンとトマト』
 『ペッパーシンケン』
 『パストラミのアヒージョソース』
 『ベーコンと長芋』



パン屋5軒で食パンの共同開発を計画

オープンに当たり、
“地域に根付くにはクチコミが一番”と、
敢えてネットでの宣伝はしなかったそう。
下町という地域柄、
ご近所つながりで評判を聞きつけて
やってくるお客様も増えています。

「メインの高齢者から、今後はファミリー層も獲得したい」

と三﨑さんは、今後の展望について話します。

また、三﨑さんが参加している
足立区パン商工組合員の有志5軒が集って
スタンプラリーや勉強会を催したり、
食パンを共同開発して
5軒同時に売り出すプロモーション計画など、
店と街を盛り上げるためのアイデアも盛りだくさん。

「パン屋に生まれ、高校生のときに
 パン職人になることを決意した」



夢を実現した三﨑さん。

「両親と一緒に実家のパン屋を
 盛り立てていく道より、自分の実力を
 発揮したいと思ったことが独立した理由」



と話します。
小さな店舗は三﨑さんの
意欲と熱意であふれています。
(H27年4月15日号掲載)


【ショップ情報】
住所:足立区千住旭町21-3
TEL:03-3881-3773
営業時間7:00~19:30
定休日:日曜・祝日
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