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編集便り

パン菓新聞社記者がちょっといい話をお届けします

サンセリテ 北の小麦 世田谷店(東京都世田谷区)

注目の店舗

外観 
埼玉県狭山市に本店を持つ
サンセリテのオーナーシェフ・高田知明氏が
満を持して昨年5月、東京の世田谷区に進出。
狭山の本店では食パンを一日500個売るという
高田シェフはメーカーや勉強会などの
製パン講師などの経験も豊富。


十勝小麦のおいしさを
伝えたい
先般北海道・十勝の小麦を使用した
旨味の濃いパンを開発し、
それを販売するための場所を探していたところ、
パンの激戦区といわれる
世田谷エリアでの出店となった。

良い材料を使用したパンは
値付けが高くなってしまい、
パンに理解の深いお客様が多い地域で
勝負したかった
と出店理由について話す。

看板メニューは『天熟食パン 十勝』
名前の由来は“天然酵母”と“熟成”を
合わせたもの。
小麦粉の灰分が高く、
またバターを豊富に練り込んでいるため
生地色はほんのりとクリーム色。
しっとりもっちりとした食感で
噛みしめると旨味が広がる。

食パン 
『天熟食パン 十勝』(378円)と
『同 オリジナル』(291円)で、
同店売上の10%を占める

「お客様のためのパンを」
26年前、実家のパン屋さんを継いだ当初、
自家製酵母種への探求とハード系などに傾倒し、
“お客様よりパンの開発”を優先した結果、
売上は芳しくない状態に。
その後、さまざまな勉強会に参加したり、
経営コンサルタントの講演を聴くうちに、
“売る”ことにも興味を抱き、
“自分のこだわりを捨てて
 お客様のためのパンづくり”
シフトを変えた。

以前はパンをつくることが楽しくて、
そちらに没頭しすぎてお客様には
支持されていなかった。
やはりお客様に向きあった経営は大事
と振り返る。
高田さん 
▲ルノートルで3年半修業ののち、
実家のベーカリーを継いで26年の高田シェフ

独創的なパンがいっぱい
例えば『ザクトロ』は、
昨年のパングランプリ東京の優勝作品。
アーモンドダイスをまぶした生地に
生クリームたっぷりのクリーム入り。

ザクトロ 
▲2015年パングランプリ東京
優勝作品の『ザクトロ』(216円)。


「マカデミアナッツを食事パンに生かしたい」
考えオリーブと合わせた
『ねっこパン』などユニークな着想が光る。

ねっこパン 
▲マカデミアナッツとオリーブを
入れたフランスパン生地を捻って
食感を引き出した『ねっこパン』(324円)

今後は通販を拡大したり、
世田谷近隣に小規模な
厨房を備えたサテライト店出店を
視野に入れているという。
(2017年4月15日号掲載)

内観 


【SHOP DATA】
住所:東京都世田谷区世田谷3-11-12
営業時間:8:30~19:00月曜定休
最寄駅:世田谷線上町駅

ピーターパンJr(JR千葉駅内)

注目の店舗

外観

千葉県船橋市を中心に郊外型大型店舗を運営するピーターパン(大橋珠生社長)が千葉駅の商業施設 “ペリエ千葉エキナカ” に ピーターパン Jr .を開業して昨年11月のオープン以来、連日の行列が続いている。

駅ナカで“千産千消”が
大ヒット、連日の行列。

店が位置するのは、中央改札内、成田線と総武本線のホーム階段に続く通路。売り場面積約7坪という店内は、常に満員で店舗前に入店待ちの行列ができている。そして電車が到着するたびに、降り立った乗客が行列の最後尾へと並んでいく。

店内

ぎっしりとパンが置かれた棚には、
「焼き立てができました」
との従業員の掛け声とともに商品が並べられ、並べた端からお客がトレイに盛り込んでいくような状況だ。

棚

同商業施設のテーマが千葉県産を千葉で楽しむ “ 千産千消”であることから、同店限定メニューは千葉県産豚製ソーセージを使用した『ホットドッグ』や千葉県名産ピー ナッツのペーストを使用したピーナッツミルキークリームを入れた『ミルキーフランス』など。

また人気ナンバーワンの『元気印のメロンパン』はクッキー生地は常温では作業できないくらい油脂の配合が多く、またパン生地もブリオッシュに近いリッチな生地。

メロンパン
▲『元気印のメロンパン』(140円)

カレーパン
▲こちらも人気が高い『カレーパン』(180円)
牛肉をたっぷり入れた自家製フィリング入り


アイテム数は50~60点程で、平日でも150万円近くを売り上げる。

狭い厨房でも
“焼き立て”にこだわる

売り場7坪、厨房23坪程度の面積だがポリシーは“焼き立てを提供する”として、厨房はフル回転で商品の約6~7割を製造。

リタード可能な菓子パン生地、調理パン用のパンなどは、近隣の店舗や自社工場から配送で対応。

デッキオーブン2台、コンベクション3台、ホイロ2台半、ミキサー1台、フライヤー2台という設備がひしめくが、それでも売上に対しての設備が不足して思うような品揃えができないことが悩みという。

店のコンセプトは
“マイステーション、マイベーカリー”

駅の構内や総武線や成田線の車内で、待ちきれずにアツアツのパンを頬張る学生さんの姿。そんな活気を損なわないよう販売員には電車のダイヤに合わせてスピードを重視したレジ・サッカーを心掛けるように指導しているという。

購入客がセルフで会計できるスタイルの最新のレジスターを導入し効率化はアップしたものの、顧客接点が減っているので販売員の笑顔と一声かけるコミュニケーションが大切であると感じているそうだ。
(平成29年1月15日号掲載)


【SHOP DATA】
住所:JR千葉駅中央改札内
TEL:043-445-8361
営業時間: 月~土7:00~22:00、
日・祝9:00~21:00
 定休日なし

スペイン石窯パンの家ボノス(鳥取県鳥取市)

注目の店舗


ボノス外観
▲シンボリックなスペイン石窯やテラス席を備えたロケーション


鳥取駅から車で5分、今年1月にオープンした大型ベーカリー。
“鳥取にスターバックス初上陸”で話題になった地域での
本格的手づくりのパン屋のオープンも大きな話題を呼んだ。
現在も週末は1日約700名が来店するという大盛況となっている。



パンを通じて
地域のお客様との絆を深める店に



異業種からの参入
同店を運営するのは㈱アマドの加藤志野オーナー
母体企業は加藤氏のご主人が経営するうどんのチェーン店。
ベーカリー経営は同店が初めてという異業種からの参入である。
開業のきっかけとなったのは、うどん店の開業展開が一段落し、
他業種で新たな道を開いていこうというものだという。
開店にあたり加藤さんのベーカリーへの熱い想いがあった。

「松江市に出かけたとき、“石窯パン工房 森のくまさん”という
ベーカリーに出会い、こんな素敵な雰囲気の店を
ぜひ自分でもやってみたいと思った」


この店は、ベーカリー開業をプロデュースする㈱ダイユーが携わった店。
加藤さんも早速開業に向かって動き始め、今年1月に完成した。


中身がしっとりとした
石窯ならではのパンを提供
 
ボノスの核となるシェフは、立ち上げのリーダーとして店づくりを行ってきた
ダイユーの製造指導員である濱口知之氏。
目玉は何と言ってもスペイン石窯で焼き上げたアイテム類。
この石窯は、煙道を利用してパンを焼成する仕組み。
煙道とは、燃焼室と呼ばれる場所で温度を上げ、その熱を逃がす道のことで、
庫内を均一な温度に保ちやすく、比較的短時間で焼成できるため
パン表面のカラメル化が早く進み、中に水分が残った状態で仕上がるため、
時間が経っても中はしっとりした食感を保つことができるのが特徴。

同店の一番人気は『塩パン』
オープンから数ヶ月間の土・日には、1日1,300個以上を販売した。
できるだけ焼きたてを提供しようという考えから、
焼成回数や焼き上がり時間は日々データを取りながら
細かく調整してゆき、
現在は1日に13回ほど焼成している。


塩パン
▲店舗売上の1割を占めるという人気の『塩パン』(100円)


その他の人気商品は『プレミアムクリームパン』(210円)。
仕込み段階で自家製のカスターを少なめに注入しておくと、
焼成後にカスターの重みでパンの内部に空洞ができる。
その空洞部分に、自家製カスターとホイップした生クリームをあわせた
ディプロマットと呼ばれるクリームをさらに注入して仕上げる。
揚げたてにこだわる『国産牛肉しあわせのカレーパン』(170円)
濱口リーダーオリジナル商品『チーズの羽』(140円)も人気。

クリームパン
▲2種のクリームがおいしい『プレミアムクリームパン』(210円)


自社スタッフの育成に注力
オープンから半年、来店客数や売上は順調にクリアしている。
濱口リーダーの現在の課題は、リーダーの育成。そのために

「技術はもとより、パン職人にとって基本的な体力となる
“考える力”を伸ばすような指導が大事」


と話す。店名の「ボノス」は、スペイン語で「絆」という意味。

「パンを通じて地域の住民やお客様、
また同店で働く スタッフとの絆を深めていきたい。
スタッフはできる限り正社員として採用し、
できる力を発揮してもらいたい」


と語る加藤オーナー。
将来は、この地に支店を展開する目標も視野に入れている。

加藤さんと濱口さん
▲オーナーの加糖さん(左)と濱口リーダー(右)

(平成28年8月15日号掲載)


【SHOP DATA】
住所:鳥取県鳥取市立川町5-233-1
最寄駅:鳥取駅から車で5分
TEL:0857-30-5410
営業時間: 7:30~19:00 定休日なし
アイテム数:約100種
(食事パン・ハード系20、サンド20、菓子40、調理20)

ブーランジェリー ヤマネコ(金沢市・西念)

注目の店舗

店主の岡﨑シェフの前職は…なんと小学校の先生でした。
“もっと自分を表現したい”とパン職人を志したのが30歳の頃。
市内のホテルや都内有名店でひたすら修業に励み、
今ではグルメサイトにて“金沢の人気No.1ベーカリー”という
評判のパン屋さんになりました。



店内


変わらないために、変わる。

店名のヤマネコとは、ルキノ・ヴィスコンティの映画“山猫”から。
主人公のセリフ

「変わらずに生き残るためには、変わらなければならない」

に感銘を受けたことによるもの。
その言葉を実証するように、
日替わりで作っている食パンのうち、
『国産小麦の食パン』に使用する小麦を
ほぼひと月ごとに変更しているそう。
現在は“春よ恋”を、
先月は“キタノカオリ”を使い
それぞれ単一品種のみで製造しています。
その理由について

「まずは小麦そのものの味を確かめたいから。
 そして小麦の品種を変えるごとに
 レシピを調整しなければならないので
 職人の力が試されるため、モチベーションが高く保たれる」


とこだわりを説明。

お客様にも、“小麦により味が違っておもしろい”
好評だそうです。最初は不安でしたが、
現在は小麦の違いによる変化を楽しんでいるそうです。

食事パンでは、『カンパーニュ』も名物のひとつ。
4種の粉をブレンドして、
小麦から起こしたルヴァン・シェフを使い
オーバーナイトでうま味を引き出しています。
分割重量1,800gという大きな焼き上がりを
店頭で量り売りしているこだわりのパンです。

カンパーニュ
▲『カンパーニュ』
プレーン(1.15円/g)、セレアル(1.26円/g)、
レザン(1.46円/g)を揃え、量り売り



夢広がるお菓子の数々

菓子文化が根付く金沢ならではの
色とりどりのヴィエノワズリーや、
タルトなどが店頭を飾ります。

「パンは日常の食べ物ですが
 日常に少しだけ上質さを加えたい」


と考え、工夫を凝らしています。
例えば、ブリオッシュ生地を型に入れて焼成し、
クリームをのせ粉糖を振ったり、
アクセントとしてハーブを添えるなど
見た目にもこだわりがうかがえます。

5.jpg
▲ブリオッシュ生地にカスタードと
クリームチーズを合わせ、
ミックスベリーをのせた
『ベリーベリーのブリオッシュ』(260円)



お客の立場に立った接客

販売を担当するのは貴子夫人。
心掛けていることは

「“感謝の気持ち”をきちんと伝えること」

レジ前に留まらず、お客様が安心して購入できるよう
に使用食材などを伝えたり、
パンの並べ方は
ハード系、フォカッチャ、ブリオッシュ、折込生地など
アイテムを生地別に配置するなど一工夫。
お客様にわかりやすくし、
同じ生地のパンを買ってしまわないための配慮だそうです。

1.jpg
『ハーブソーセージフォカッチャ』(300円)は、
フォカッチャ生地でソーセージを巻き、
セレアル(オーツ麦、ひまわりの種、
白ゴマ、アマニ)を付けて焼成


「パンについては素人なので、
 お客様の立場で考えて工夫しています」


と話します。
保存方法、食べ方、焼き上がりのスケジュールなどを
プリントしてお客に手渡しているのも

「自分でもわからなかったことを
 お客様に伝えたい」


という貴子夫人の心配りです。

一日約140~160人という来客数で、
人気のパンは午前中に売れてしまうことが多いため、
午後にも焼成回数を増やすことが
今後の課題とのこと。

岡﨑夫妻
▲岡崎シェフと奥様の貴子さん

岡﨑シェフは

「将来は、もっとじっくり作れるよう
 郊外に移転するか、店を任せられるような
 スタッフを育てるか決めかねている」


と話します。じっくり、ていねいな仕事への
決意が伝わってきます。
(平成28年8月1日号掲載)



外観

【ショップ情報】
住所:石川県金沢市西念4丁目19−26
    プレイヤード 1F
TEL:076-232-7785

ホーフベッカライ エーデッガー・タックス(東京都・千代田区)

注目の店舗

ハプスブルク家御用達の
名門ベーカリーが世界初上陸


【外観】ホーフベッカライ エーデッガー・タックス

1569年創業のオーストリアの名門ベーカリーが
2015年9月5日、東京・神田の商業施設
「マーチエキュート神田万世橋」にオープン、
本格営業を開始した。



※現店舗での営業は7月15日(水)で終了
 今後、ノイエスと統合して新規開業の予定



ウィーンのパン・菓子の文化を発信

明治45年完成の赤レンガ造りの万世橋高架橋を再現した
商業施設にふさわしい、伝統あるベーカリーのオープンである。
古くから文化が根付いている神田という、
文化発信の拠点として最適なロケーションでもある。


オープンに際して、同店の9代目となる
オーナーシェフロベルト・エーデッガー氏は
10代目となる子息のマチアスさんと共に来日。
古都グラーツに位置し、ハプスブルク家にも愛された老舗が
世界初上陸となった理由について
「欧州以外の文化圏にウィーンのパン・菓子、
また文化そのものを広めたいと考え、
欧州文化に親しみが強い日本を選んだ。
良いパートナーに出会い、感謝している」
と語った。

また、同店に伝わる120年前のクグロフ型を
オーナーシェフである野澤氏に贈呈している。


1エーデッガー氏
▲ロベルト・エーデッガー氏(写真左)は21歳で
マイスターを取得。右は息子のマチアスさん



ノイエスにてオーストリア食文化の普及に努めてきた野澤氏は
出店の経緯について
「エーデッガー氏と欧州で知り合い、
3年前に百貨店の展示会で同店のパンを出品したことが
きっかけで、職人としての感性が近いことから意気投合し、
いずれ日本に出店させたいと考えていた。
赤レンガの重厚感あふれるマーチエキュートの
佇まいが気に入り、今回の出店となった」

と話す。

今後は2号店なども展開も視野に入れていくとのこと。


2野澤氏
▲エーデッガー・タックス本店に伝わる120年前の
クグロフ型を贈呈されたノイエスの野澤孝彦氏




作れる職人も少ない『ハンドカイザー』

約7坪の店で扱うパンや菓子は合計約30種。
ノイエスの厨房で、門外不出のレシピを伝授された
野澤氏が製造している。
スペシャリティは手成形の『ハンドカイザー』で、
機械化が進んでいるオーストリアでは
作れる職人の数は少ないという。

「手成形すると生地の目が緻密になるため食感がもっちりし、
また水分が抜けにくいためおいしさが長持ちし、旨味も強くなる」

と野澤氏は語る。



5ハンドカイザー
▲本国では丸めてスタンプを押すだけの成形も多い
カイザーだが、同店は手成形の『ハンドカイザー』(200円)


3キプフェル
▲クロワッサンの原形となった『キプフェル』(250円)


6オープンサンド①※イメージ
▲朝食やランチにも最適なオープンサンド
日本限定メニュー




昔ながらのベーカリーは希少


オーストリアのベーカリーでも、現状は大半が機械化されており、
規模も大きくチェーン展開している店が多い。
そのような中でエーデッガー・タックスは完全にスクラッチ製造。
グラーツでは最古のベーカリーで、
1888年にはオーストリア-ハンガリー帝国王家御用達を授与しており、
レシピの大半は当時のままだという。


本店のパンについて
「約450年間の歴史で培ってきたレシピの数は約1,000種あり、
その中から20種程度を選んで製造している」
とエーデッガー氏。

すべてが伝統製法に則って作業する職人は8名。
ハンドカイザーは4人の職人で一日400~500個製造、販売する。
(2015年10月15日号掲載)



【ショップ情報】

※同住所での営業は7月15日(水)で終了
 今後、ノイエスと統合して新規開業の予定


住所:東京都千代田区
神田須田町1-25-4
マーチエキュート神田万世橋S3区画
TEL:03-5296-5777
営業時間:8時半~21時(月~金)
11時~21時(土)
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